ストレスチェックを実施する前に、高ストレス者に対しての措置も考えておかなければいけません。実際のところ、どのように対応したらいいかわからない事業者も多いのではないでしょうか?
そこで、高ストレス者への対応をわかりやすくまとめてみました。

高ストレス者の判定基準

まず、ストレスチェックを実施するには、事前に高ストレス者の判定基準を知る必要があります。判定基準として考えられるのは、2つ。

産業医の意見を参考にする

1つめは、自社内の衛生委員会で産業医の意見を参考に、高ストレス者の判定基準を決める方法です。この方法だと、自分の会社に適した対応ができます。

厚生労働省の基準を参考にする

2つめは、ストレスチェックの結果が、厚生労働者が決めた点数以上の人を、高ストレス者と判定する方法です。厚生労働省によると、集団の10%が高ストレス者という判定結果が標準になるとのこと。全国的な平均に対しての、自社の高ストレス者の比率がわかるので、大いに参考になるでしょう。

点数が全てじゃない!

ただ、判定基準を決めるにあたり、結果の点数だけを頼りにしてはいけません。仕事環境でのストレスは、労働者の業種や仕事の負担の大きさなども大きく影響します。

まずは、ストレスチェックを一度実施してみて、初めて得る気づきもあるでしょう。例えば、顕著に高ストレスがあるとわかる労働者もいる一方で、潜在的な高ストレス者もいます。自覚症状としてそれほど目立つ症状はないけれど、メンタルヘルス不調のリスクがある労働者を見逃してしまうこともあるので、要注意です。

1つの目安として、「心身のストレス反応」の評価点数の合計が一定以上、且つ「仕事のストレス要因」「周囲のサポート」の評価点数が著しく高い労働者も、高ストレス者の可能性あり、と考えてください。ストレスを抱えた労働者のケアに早めに着手するためにも、高ストレス者かどうかの見極めが重要になります。

産業医との面談

高ストレス者と判断された労働者は、希望すれば産業医との面談ができます。書面またはメールで人事部に申し出があったら、1ヶ月以内に応じる必要があります。

事業者は、労働者からの面談の申し出を拒否できません。ただし、これは義務ではないので、高ストレス者と判断された労働者は、絶対に面談を受けなくてもいいのです。産業医との面談では、労働時間などの勤務状況、ストレスの状況の確認をした上で、セルフケアを始め職場環境の改善指導などを中心に話します。

改善指導には、運動や体重管理、睡眠などの生活習慣の指導も含まれます。
この面談内容は、外に漏れることはないように、プライバシーの管理は厳重に行いましょう。

産業医との連携も大切!

面談する医師は、誰でもいいわけではなく、高ストレス者の対応ができる医師である必要があります。

労働者の症状を判断し、精神科・心療内科に紹介する必要があるか見極め、1人ひとりに応じた的確なアドバイスをしなければいけません。1回で面談が終わるとも限らず、労働者の心身の状態によっては、2度3度と面談する必要が出てくるでしょう。そのためにも、企業と産業医がしっかりと情報共有することが必須です。

それによって、高ストレス者のフォローがきめ細かくできるのです。産業医のアドバイスによっては、労働者の仕事の軽減などの可能性もあるので、産業医の責任は重大とも言えるでしょう。

結果提供への同意について

このストレスチェックの結果は、労働者の同意があれば、事業者に提供することができます。

高ストレス者と証明するために、労働者は会社の窓口にストレスチェックの結果を開示または結果を提供しなければいけません。場合によっては人事権者が窓口になっているケースもあるので、労働者の不利益になることがないよう、会社は配慮する必要があります。

結果提供の同意が得られない場合

しかし、中には労働者からの同意が得られない場合もあります。そういったときは、どのように対応したらいいのでしょうか?

そんなときは、人事総務から事務手続きという名目で1人選出し、産業医とチームを組んでください。つまり、実施事務事業者を決めるのです。この「実施事務事業者」ならば、実施者の業務サポートが可能なのです。ただし、人事権を有さないものに限るので注意してください。この1人を選出する際は、衛生委員会できちんと決める必要があります。

選出された社員の負担は重い

選出された1人は負担が多いことも、考慮すること。保健師やカウンセラーとの面談設定、ストレス者に受診を勧奨するなど、やるべきタスクはかなりの量になります。これに加え通常の仕事もあるので、慎重に実施事務事業者を決める必要があります。

ただし労働者の同意がなくても、高ストレス者に対応できるときもあります。それは、自傷・他傷の恐れがある場合です。
これらのときは、一刻も早く対応しなければいけません。

ストレスチェック制度は、高ストレス者を把握したらそれで終わり、ではありません。
高ストレス者を把握してからの対応こそが、問われるのです。
職場環境の改善に努めるためにも、ストレスを抱えた労働者を1人でも多く減らしましょう。

まとめ

ストレスチェックにおける高ストレス者対応は、労働者の環境や会社によっても異なります。高ストレス者の判定基準を決めた上で、産業医との面談や結果提供への同意まで、自社にとってベストな方法を検討しましょう。そうすることで、労働者にと事業主の双方にとって働きやすい職場環境に繋がっていくのです。

この記事のポイント
  • 高ストレス者の判定基準は、自社独自のものと厚生労働省が定めたものの2つある
  • 産業医との面談希望には、必ず応じなければいけないが、面談は義務ではない
  • 労働者の同意がなくても、ストレスチェック結果を事業者に提供できるケースもある

関連リンク:ストレスチェックチェックパッケージ

(編集:創業手帳編集部 / 監修:合同会社パラゴン|櫻澤博文