ストレスチェック制度導入にあたり、外部委託を検討する事業者もいるのではないでしょうか? いざ、業者に頼もうと思っても、どの業者に何を委託したらいいのかわからないのが、悩みどころ。そこで、ストレスチェックを業者に依頼するときのポイントをまとめてみました。

業者へ委託する範囲は4つに分かれる

外部委託する場合の委託範囲として、「実施者」「面接指導者」「実施事務従事者」「情報管理システム」の4つ が考えられます。業者への委託範囲をどう決めるかは、会社によっても異なり、一概にここまで委託するべきという決まりはないのです。そのため、自社に必要なものはどれなのか、優先させたいものはどれなのか、見極める必要があります。

実施者

実施者の項目については、「実施方針策定・組織分析・職場環境改善のアドバイス・労働基準監督署への報告書の署名」などが具体的な委託機能として挙げられます。

面接指導者

面接指導者の項目については、「メンタル診断・事業者へのフィードバック・事後措置の検討」などが具体的な委託機能として挙げられます。

実施事務従事者

実施事務従事者の項目については、「事前準備物作成・安全衛生委員会での実施方針決め・社内通知連絡・ストレスチェック質問票配布や回収・個人結果通知・産業医面談日程調整・現場へのフィードバックサポート・組織分析サポート」などが具体的な委託機能として挙げられます。

情報管理システム

情報管理システムの項目については、「5年間ストレスチェック結果保存・WEBでのストレスチェック・個人情報開示確認・面接希望者確認・産業医面談記録・組織分析」などが具体的な委託機能として挙げられます。

とざっと挙げてみるだけでも、これだけの項目があります。

もちろん、すべて社内でできるのならば、問題ありません。ただ、ストレスチェック制度は専門性が高く、最初から内容のすべてを理解するのは困難なこともあります 。さらに企業側は個人情報の取り扱いが大変ですし 、ストレスチェックに関わる社員はそれなりに負担が大きくなります。そう考えると、やはり業者に委託するのが、最適と言える でしょう。

「安さ」だけで選ばない

ストレスチェックの価格は、業者によってさまざまです。どの業者の価格が適正なのか、わからない事業者がほとんどかと思います。

できるだけ費用を抑えたいけれど、何を削ればいいかわからない。かといって格安のストレスチェックを行う業者に依頼すると結果的に費用が高くなることもあります。目先のお得感に左右されないためにも、外部委託業者にはどんなケースがあるのか把握しておきましょう。

外部委業者には、2つのケースがあります。

EAP(従業員支援プログラム)企業

1つめは、EAP(従業員支援プログラム)企業です。高ストレス者を対象とした電話相談やカウンセリングなどのサービスを提供して、自社のバックエンドサービスに繋げます。この場合メンタルヘルスのニーズを作るため、ストレスチェックの結果で多くの人が高ストレス者と判定される可能性があります。

中にはストレスチェック自体のコストは全くかからない業者もあり、一見お得に感じられることもあります。ほかにも、集団分析のみを無料で行う業者もあります。要は、これらの企業にとっては、ストレスチェック後のサービスこそが狙いなのです。”独自性があるストレスチェック”を謳う業者もありますが、実際内容は似たようなもの。ほとんど内容に違いはありません。

IT企業

2つめは、IT企業です。システムを作るのが本業なので、ストレスチェックの体制を作るのは比較的容易なこと。ただし、実施のみになってしまい、高ストレス者のフォローができないのが弱点です。高ストレス者から医者の面談希望があれば、メンタルの対応経験がある産業医が1ヶ月以内に対応しなければいけません。これがきちんとできるかは、重要なポイントです。

フォロー体制で必要なサービス

では、ストレスチェック後に必要なサービスとはどんなものでしょうか?
高ストレス者のフォロー体制には、以下のようなサービスがあります。

  • 電話カウンセリング
  • 対面カウンセリング
  • 産業医派遣調整
  • セルフケアコンテンツ
  • 研修
  • コンサルティング医療機関
  • 不調者の医療機関受診ネットワーク

フォロー体制の中には、利用者がさほど必要としないサービスもあります。例えば、電話カウンセリングです。このサービスは、機能しているとは言いがたいのが現状です。実際に、電話相談する高ストレス者はほとんどいません。

事業者は、自社にとって必要なフォロー体制があるかを見極める必要があるのです。不調者の医療機関受診ネットワークも、意味を成しません。全国の病院と連携することより、近隣の医療機関で受診できるかどうかの方が重要です。

一方、利用者にとって必要なサービスは、対面カウンセリングです。仮に面談希望者が多かった場合は、産業医との面談前にトリアージしたら面談者を絞ることができ、その分面談の質を高めることができます。

やり方次第で活用できるサービスは、ポータルサイトやeラーニング形式のセルフケアコンテンツ・研修などです。まず、セルフケアコンテンツは、高ストレス者本人が使う気持ちにならないと意味がありません。自ら本人が使うような工夫をしているかがポイントになります。

研修においては、組織分析をした上で明確な目的があるものならば、意味のあるものとなるでしょう。ストレスチェックをやる前の意識づけとして研修を活用するのも、1つの方法です。

まとめ

ストレスチェック実施の前に慌てて業者選びをすると、こんなはずじゃなかったということになりがち。信頼できる業者を見つけるためにも、時間にも余裕を持って業者選びをしましょう。価格・委託する内容・フォロー体制で必要なものを総合的に考え、判断し、自社に合った業者を見つけてください。

この記事のまとめ
  • 外部委託は、実施者・面接指導者・実施事務従事者・情報管理システムの4つが考えられる
  • 業者選びをするときに、自社に必要なことは何か見極める必要がある

関連リンク:メンタルヘルスケアサービス

(編集:創業手帳編集部 / 監修:合同会社パラゴン|櫻澤博文