ストレスチェックをすることで、今までは見えなかった職場にあるストレスに気づくということがあります。ストレスチェックの中でも最も重要視されている「ストレス反応」を中心にストレスチェックの活用法を見ていきたいと思います。

ストレスチェックのポイントは3本柱!

ストレスチェックでポイントとなるのは次の3つになります。

  1. 「仕事のストレス要因」
  2. 「ストレス反応」
  3. 「修飾要因」

「仕事のストレス要因」は読んで字のごとく、仕事の負担(量も質も両方です)、身体的な負担、対人関係、職場環境、適性度、働きがい、技能の活用などがあり、チェック項目数は全部で17個です。

「ストレス反応」に関する基準は、活気、イライラ感、疲労感、不安感、抑うつ感、身体愁訴などがあり、チェック項目は全部で29個もあります。

「修飾要因」の基準となるのは、サポートです。上司から、同僚から、家族・友人からのサポートについて、そして、仕事・生活の満足などがチェック項目になっており、その数は全部で11個になります。

ストレスチェックで重要視されるのは「ストレス反応」?

先ほどチェックした項目数でも分かるように、ストレスチェックの3本柱の中で重要視されているのは、「ストレス反応」です。人事が最も注意して、活用すべきポイントになっています。それは一体なぜか?

理由はとてもシンプルです。「ストレス反応」は今を表しています。ストレスレベルを高い方から並べていくと、「抑うつ感」、「疲労感」、「イライラ感」、「身体愁訴」、「活力の低下」となります。このようなストレス反応を訴える労働者に対しては、「今まさに、この状況にある」ということを理解した上で、早めの対応が必要であることをしっかりと心にとめておきましょう。いちばん高いストレスレベルの「抑うつ感」を発生しているケースでは、かなりの注意が必要と言えるでしょう。

ストレス反応のレベル別症状例

ストレス反応は、しっかりと症状として出ているのが特徴です。しかし、見ている  側に知識がないと、「いつもと何かが違う、どこかおかしい」という様子に気づくことはできません。ストレス反応レベル別に症状の具体例をチェックしてみましょう。ストレス反応のレベルが低い順から並べています。自分の周りに、こんな症状が出ている人はいませんか?もしくは自分が当てはまる症状はありませんか?

  1. 「活力の低下」

 

  • 遅刻、早退、欠勤が増えている
  • 無断欠勤をする(休みの連絡が来ない)
  • 思考力、判断力の低下を感じる
  • 仕事の結果が出せなくなっている
  • 職場での会話が少なくなる、または急に多くなる
  • 元気がない、覇気がない、活気がない
  • 服装がきちんとしていない

 

  1. 「身体愁訴」

 

  • 不眠または過眠
  • 食欲低下または過食
  • 頭痛、肩こり、めまい、しびれ
  • 動悸、息切れ
  • 吐き気、のどのつかえ

 

  1. 「イライラ感」

 

  • イライラの原因が身体なのか心なのかわからない
  • 無意識で動き回る
  • 椅子にじっと座っていられない
  • 周りにあたる

 

  1. 「疲労感」

 

  • 身体にこわばりを感じる
  • 身体が自分のものではないように感じる

 

  1. 「不安感」

 

  • とにかく不安
  • 不安を感じとにかくイライラする
  • 警戒心が強くなる
  • 落ち着きがなくそわそわする

 

  1. 「抑うつ感」

 

  • 気分が落ち込む、気分が沈む
  • 何をしても楽しいと感じない。うれしい、楽しいという感情がわかない
  • 考えが浮かばない、判断・決断ができない
  • 何もしたくない、する気がおきない
  • ネガティブに物事を考えてしまう

ストレスだ!と一括りにしてしまうことが多いものですが、ストレス反応の症状はレベルによって微妙に違います。このことからも分かるように、ストレス反応のを知ることはとても重要なポイントになります。周りが気づいてあげるためには、この微妙な違いをまずは「知る」ことが求められます。

ストレスっていったい何?

stress

さきほども少し触れましたが、ストレスは一括りにしてしまいがちではないでしょ  うか。そもそもストレスとはどういう意味なのでしょうか?

もともとは機械工学の専門用語であり、「ストレスがかかると物体が変化する」とい う当たり前の現象をストレスと呼んでいました。もともとの表現は「外力が物体に加わった場合の歪みや不均衡」となります。この「外力」がストレッサー、「歪みや不均衡」がストレス反応に当たります。

ストレッサーには「物理的ストレッサー」「化学的ストレッサー」「生物学的ストレッサー」「精神的ストレッサー」があります。ただ、ここで気をつけたいのは、同じストレスを受けた場合に、同じ反応をするとは限らないのです。つまり、同じ職場にいて同じ仕事をしているのに、ストレスを感じずに仕事をする人と、ストレスにより体調を崩してしまう人がいるというのがいるのと同じです。

職場ストレス減らすためには何をすればいいのか

ポイントは、自分のストレスに気づくということが大切ですが、ストレスを減らしていくためにはどのような対応が必要なのでしょうか。職場で変えることのできる緩衝要因のひとつに、上司や同僚、周囲からのサポートが挙げられます。コミュニケーション不足が職場のストレスを増やしてしまっているのであれば、良好なコミュニケーションを気づけば良いわけです。コミュニケーションを活発にさせるための施策を、人事担当が考えるというのもひとつの方法です。

ストレスチェックは全員に受けてもらうことがベスト

ストレスチェックは、より的確な集団分析をするためにも、理想は全員、可能な限り対象者全員に近い人数に受けてもらうことがベストです。そのためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。

ストレスチェックを受けない人、前向きになれない人の中には、「仕事が忙しいから」「めんどくさいから」「目的がわからないから」などといった理由が挙げられますが、深刻なのは、何か不調があった場合に会社に知られたくない、知られることで仕事や出世、自分の将来に影響が出るのを避けたいという考えの人もいます。

このような考えを持ってしまう理由のひとつに、「ストレスチェック」についての理解不足が挙げられます。「ストレスチェックの結果が不利益をもたらすことはない」ということを周知させる必要があります。メンタルというのはとてもパーソナルな問題と思われがちですが、結果、会社全体の問題へと繋がっていきます。人事担当者としては、すべての従業員がストレスチェックを「受けよう」と思えるように働きかけをする必要があります。

ストレスチェック制度で禁止されていること

ストレスチェックの結果を知られたくないことを理由に、ストレスチェックそのものを受けないという人もまだまだいるようです。しかしストレスチェック制度では、3つの禁止事項が設定されています。

その3つの禁止事項とは「労働者の不利益な扱い」「面接結果による不当措置」そして「同意なしの事業者への結果提供」です。そもそも義務化とされているストレスチェックは、チェックを受ける労働者には義務かはされていません。チェックを受けることも、受けないことも、受けたとしても結果を事業者に提供しないことも選択できますし、指導の対象となっても申出をしなくてもいいのです。

ストレスチェック制度は、実施者となる産業医の果たす役割が多いので、制度の責任も産業医にあると思われがちですが、最終的には事業者にあることを忘れてはいけません。制度の主体はあくまでも事業者であることを念頭に置いて対応していくことが求められています。

(編集:創業手帳編集部 / 監修:合同会社パラゴン|櫻澤博文