ストレスチェックを導入したものの、事業者が取り組まなければならない課題はたくさんあります。スムーズに実施するためにも、課題が山積みになる前に、1つ1つの課題をクリアしていく必要があります。今回は、導入後に考えられる課題を解説します。
まず直面するのは「受験率が低い」という課題
ストレスチェックを行うにあたってまず直面するのが「受験率の低さ」です。
ストレスチェック制度があっても、従業員が受験してくれないことには、意味がありません。法律では、従業員全員受検しないといけないことになっていますが、受検に強制力はないのです。会社の健康診断でさえ受けたがらない従業員となると、さらに受検させることが厳しくなることも考えられます。
「受験率が低い」要因とは?
では、どうして彼らは受検を躊躇するのでしょうか?
要因となる問題は以下です。
プライバシーの問題
1つ目の原因は、プライバシーの問題です。
ストレスチェックの結果によって、「解雇などの不利益が生じないか」と心配する人々が多くいるのが現状です。
受検率を高くするには、従業員にストレスチェック制度の目的や主旨をきちんと理解してもらうことが必要です。
社内で情報を共有する場合は、必要最小限の範囲にとどめておくこと。従業員がプライバシーの問題について不安を感じることがないよう、十分な説明を行うことが大事なのです。
そして、定期的に受検率をモニタリングするのも、オススメです。調べてみると、受検率の低い部署と高い部署などばらつきがあるかもしれません。
そのときは、受検率が低い部署にいる従業員に、受検を勧奨しましょう。
回答フローが複雑
2つめは、従業員が回答しやすいシステムかどうか、です。
現在、ストレスチェックはWebシステムでの実施が主流になっています。
そのため、Webシステムが使いづらいことで、受検率が低くなる可能性があります。
多様なケースを考慮して、スマートフォンやマークシートでも回答できるシステムを整えておくと、より従業員にとっても
回答しやすくなるでしょう。
従業員が本心で回答しない
次は、ストレスチェックの結果が出た後の、課題です。
まず、従業員が正確に回答しているか、本当のことを回答しているか、ということも懸念材料です。
質問項目が57もあれば、回答がいい加減になってしまうことも考えられるでしょう。
そしてプライバシーの問題が守られているといえども、本当のことを記入するのを躊躇う従業員も多く居ます。
面談に応じない社員にどう対処するか
さらに、ストレスチェックを受けてくれたのはいいものの、高ストレス者と判断された労働者が快く面談に応じるとも限りません。やはり、ここでも従業員は、本音をさらけ出していいのだろうかと不安を感じるのです。仕事にマイナスの影響があるのではないかという懸念に繋がるのは、避けられません。
さらに厄介なのは、ストレスチェックの結果を人事と共有することに同意せず、面接の申し出をしないケースです。この場合は、衛生管理者または人事総務から、人事権を有さない事務を産業医のパートナーとして迎えて、労働者に受験勧奨を行います。この方法が、最もスムーズに受験勧奨ができる方法と言えるでしょう。
また、面談担当者を労働者にあらかじめ従業員に紹介する方法や、従業員が困ったときに手を上げやすい窓口を設置するなど、会社の規模や状況に応じて臨機応変に対処することがポイントです。
高ストレス者にどう対応するか
会社側にとって、高ストレス者への対応も大きな課題です。例えば、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、場合によっては休業など、高ストレス者の対応で負担がかかるのも否めません。
人事だけで高ストレス者への対応するのでなく、上司や管理監督者と一丸となって対応することが求められます。具体的には、上司に社内での高ストレス者の順位だけでなく、職場全体のデータなどあらゆる角度から検討してもらえるように、話し合いを重ねるのです。
ただ、こうした話し合いをすることで通常の業務にも影響し、就業時間内に仕事を終えることが困難になる上司も出てくるでしょう。人事サイドは、時間外労働時間が増えている従業員がいないか、しっかりと確認することも大事です。高ストレス者の対応で、新たなる高ストレス者を生み出すことがないように、体制をしっかりと整えるのです。
制度の目的を見失わない
ストレスチェックが、形だけの導入になっては意味がありません。
会社でストレスを抱えている労働者が、どんなことにストレスを感じているかを打ち明けることができる職場環境を作ることが、真の目的なのです。
ストレスを抱えているのに相談できない人を見逃さず、彼らにどう対応していくかが、ストレスチェックの今後の大きな課題と言えます。
ストレスチェック制度導入後こそ、この制度の狙いを忘れないようにしてください。従業員の個人情報が保護され、不正な目的で使用されないようにし、労働者も安心してストレスチェックを受けられるようにすることが、高ストレス者への対応や職場環境の改善に繋がっていくのです。
自社に合った最適のやり方を模索し、ストレスチェックの課題解決法に落とし込んでいく作業を、1つずつ丁寧にやっていきましょう。
- この記事のポイント
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- 従業員にストレスチェックの目的を理解してもらえるよう努めること
- 悩みを打ち明けやすい環境づくりには、様々な人とのコミュニケーションが重要
- 高ストレス者への対応では、上司との話し合いも必要不可欠
(編集:創業手帳編集部 / 監修:合同会社パラゴン|櫻澤博文)