生活していくうえで、ストレスは切っても切り離せないものです。昨年12月から「ストレスチェック制度」が義務化されたのをご存知ですか?注目度の高い制度ではありますが、どんな人がストレスチェックの対象者になるのか、実は、意外と間違った解釈をしているケースが多い様なのです。ここでは、厚生労働省の最新の資料に基づいて、ストレスチェック対象者について、説明していきたいと思います。
自分は対象者?ストレスチェックが必要かどうかを理解しよう!
ストレスチェック対象者というのは、平成26年12月17日に厚生労働省労働基準局安全衛生部が発表した「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度討論会報告書」によると、「現行の一般定期健康診断対象者の取り扱いを参考とし、これと同等とすることが適当」と記載されているのです。実は、ここが間違いなのです。当初の方針では、一般の定期健康診断と同じように考えるようになっていました。しかし、実際に制度化に至る過程で、その見解の修正、内容の微調整が行われて来たのです。結論から言うと、ストレスチェックの対象範囲というのは、当初とは大きく変更が発生しているのです。
ストレスチェック対象者の範囲を知るためには?
ズバリ!ストレスチェック対象者の範囲を知るためには、厚生労働省のWebページを見るのがおすすめです。「ストレスチェック制度Q&A」というPDFがあるので、まずはこちらを開いてみましょう。とにかくたくさんのQ&Aが記載されていて、読むのが本当に大変というのが率直な感想なのですが、情報量が多い分、参考になるものも多く含まれています。更新日をチェックすると分かるように、どれだけの最新版が載っているかということも知ることが出来るのです。
ストレスチェック実施の対象範囲
結論から言ってしまいましょう。ストレスチェック実施の対象範囲になるのは、「常時使用している労働者」、言い換えると、「常態として使用しているか」ということになります。常態とは、「継続して雇用している」ということです。ストレスはみんなが抱えているものであるにも関わらず、定義するには曖昧な部分というのも存在しています。ですが、大原則として、ストレスチェック実施の対象者は以下の通りになります。
- 使用者という立場である社長、役員は対象者には含まれない
- 原則として、その他「すべて」の労働者が対象となる
「すべて」とは文字通りすべてです。パート、派遣社員、日雇いなど、就労時間数も関係ありません。ただし、対象外となる場合もあります。それは、既に辞めてしまった社員や、産休中の社員は、職場のストレスの影響を受ける可能性はないと判断されるので、対象外となるわけです。
ストレスチェック対象者の決め方
前述を考慮すると、例えば、週に1回のパート社員もストレスチェックの対象者となります。ストレスチェック制度の趣旨には、「ストレスチェックを実施する時点」において、それぞれのストレスの度合いを確かめ、職場のストレス環境を把握することにあるからです。従業員全員が対象になるなんて、非現実的?と考えたり、手間や時間がかかりすぎると思うかもしれません。そういった場合には、最初は対象を正社員だけにしてみるという方法もあります。次年度から徐々に、パート、契約社員・・・と対象者を広げて大原則に近づけるというのもひとつの手になります。
ストレスチェックを受ける義務はない!
先ほども少し触れましたが、一般定期健康診断とは違います。ストレスチェックを受ける義務というのは労働者には規定されていないのです。つまり、受けないという選択をしても法律違反になることはありません。もし、受検しない労働者がいたとしたら、その取扱いについて、気を付けなければいけない点があります。「検しないこと等を理由にした、不利益取扱いは禁止されています。つまり事業者は不利益取扱いの理由が、これからご紹介する3つの理由以外のものであったとしても、実質的にその3つに該当すると見なされた場合は、行ってはならないものとしてみなされるということを覚えておきましょう。
- ストレスチェックを受けない労働者に対しては、受検しないことを理由に事業者は不利益な取扱いを行ってはいけない。
- 個人のストレスチェック結果の提供に同意しない労働者に対して、同意しないということを理由に、不利益な取扱いを行ってはいけない。
- 労働者が面接指導の要件を満たしているにも関わらず、面接指導の申出を行わない場合、この申出を行わないことを理由に、不利益な取扱いをしてはいけない。
いろいろ難しいことを言っているように見えますが、つまりは、義務ではないので、受検しないことに対しての不利益な取扱いは禁止ということなのです。
事業者の方針はとても重要!
事業者として心がけておきたいのは、会社の方針です。法律で決められたことだからというような考え方、メンタルの不調を訴える人が多いからとりあえず、仕方なく取り組んでみるといったような、後ろ向きな対応では、まったく意味がありません。メンタル失調者を減らすことは難しいと言えるでしょう。実際に前向きに取り組んでいった企業では、いわゆる「うつ病」による休職者をゼロにまで減らしたという実績が残っています。ストレスの原因となるものから社員を守る!という決意のもと、職場環境の改善、メンタル不調への対応、職場復帰支援などを行うメンタルヘルスケアを推進し、働きやすいか、活気のある環境が作られることで、企業の生産性も上がり、企業の心的健康度も向上するという結果をもたらしたという報告もされています。
逆に、労働者の気持ちに寄り添った取り組みをしない企業では、達成感を味わえない長時間業務に嫌気がさし、生産性が低下、さらなるメンタル失調者を生み出すという悪いサイクルに入ってしまいます。労働力さえ失われるということにもなりかねません。そうなれば、企業内だけでなく、顧客にも迷惑をかけるという結果になるため、負のスパイラルからは抜け出せなくなるわけです。
衛生委員会の調査審議の参考に
衛生委員会における調査審議事項としては議題に「ストレスチェック制度導入について」を挙げることからスタートしてみましょう。衛生委員会でできること、それは、事業者の方針についての審議、そして、労働者側の希望をふまえた内容を決めていくことです。大切なのは、制度の導入の意味、制度を取り入れることによって良くなることがあるという説明、労働者の意見を汲み取りながらどういった形で実施していくつもりなのか、そして結果の通知の仕方はどのようにするのかなど、すべて衛生委員会で協議するということは、安心感を持って多くの労働者が受検することに繋がるでしょう。
会社側としては、個人情報の保護や、不利益な取扱いをしないということ、そのための具体的な制度を構築しているという姿勢を見せながら、衛生委員会での調査や審議を丁寧に説明していくということが大切になってきます。「メンタルヘルス指針」に基づいた対策を行ってこなかったという場合には、労働安全/衛生コンサルタント、もしくは、社会保険労務士の力を借るのもひとつの方法です。長時間労働者には医師による面接を行い、メンタル不調が原因で休職をしていた労働者には、職場復帰支援プログラムといったものを構築し、整備していくというのもおすすめです。
まずは気楽にセルフチェック!
健康診断のメンタルバージョンとも言われているすストレスチェック。いろいろ難しそうに感じますが、良い環境で、気持ちよく仕事をし、生産性をアップすることに繋がることがポイントになるわけです。5分でできるセルフチェックのページもあるので、まずは、気楽に、自分のストレス度を診断してみませんか?
(編集:創業手帳編集部 / 監修:合同会社パラゴン|櫻澤博文)