新制度導入!ストレスチェック義務化により、実施者にとっては、150ページのマニュアルに目を通すだけでも、気が重くなる作業ではないでしょうか。理想はすべてを読むことですが、まずは、抑えるべきポイントをしっかりと把握しておきましょう。

義務化なのに対象外あり!ストレスチェックの「対象企業」とは

義務化される職場のストレスチェック制度ですが、対象となるのは、従業員50名以上の事業所です。従業員50名未満は対象外となりますが、それ以外にも、免除となる条件があります。それは、現地法人化された海外の事業所です。労働安全衛生法は日本国内が適用対象となります。

ただし、日本からの出向という形で働いている従業員はストレスチェックの対象となるので注意しましょう。対象外の事業所も努力義務という形で実施が推奨されています。

ストレスチェック義務化制度における範囲とスケジュール

ストレスチェック義務化の施行日は2015年12月1日になります。この日以降、1年に1回以上のストレスチェックの実施が義務づけられることになります。1回目のストレスチェックは、2016年11月30日までに実施すれば良いのです。

ストレスチェックの義務化で実施すべき必須事項は下記の4つになります。ストレスチェックを独自の方法ですでに導入済みの企業でも、今回の義務化によって、法に沿った内容や体制の見直しが求められています。

  1. 年に1回以上のストレスチェックを実施する。対象はすべての従業員。実施者は医師、保健師とする。
  2. 高ストレスと診断された従業員の中で、希望する対象者には、医師により面接が実施される。
  3. 面接後の医師の意見に基づき、対象の従業員に必要、かつ適切な措置を実施する。
  4. 実施状況を労働基準監督署に報告する。

ストレスチェック義務化!「誰」が「何」をする?

すでに何度も触れていますが、ストレスチェックは「義務」です。実施に関わる担当者が必要になります。「誰」が「何」をするのか。それぞれの担当者、その役割についてしっかり把握しておきましょう。

  1. 社内専門組織(衛生委員会など)

ストレスチェックの実施を管轄するのは、社内の専門組織です。50人以上の労働がいる事業所には、設置が義務化されている衛生委員会が望ましいでしょう。こちらに関しては、特別細かい規定はありません。

  1. 実施者(医師、保健師、看護師や精神保健福祉士)

ストレスチェックの実施は、実施後の面接指導も含めて産業医が担当することが望ましいです。予算などを含めた事業所の状況にあわせた手配も問題なしです。

  1. 実施事務従事者

実施にあたっての事務的な業務担当者になります。ストレスチェックの結果の回収、入出力、受検者とのやり取りといった実務を行います。従業員に対する直接的な権限を持たないといった一定の条件をクリアした人が対象です。

ストレスチェック制度の流れは大きく分けて3つになります。制度の実施前、実施中、実施後です。では、それぞれの段階で必要な作業はどのようなものになるのでしょうか。

  1. ストレスチェック実施前

まずはストレスチェック調査票の決定が必要です。実施者が対応します。次に、従業員への事前刻苦値、各担当者の手配と配置、予算管理などが必要です。人事担当者が対応します。ストレスチェックにITを導入そして活用した場合には、IT

部門の担当者を設置する必要があります。

  1. ストレスチェック実施中

ストレスの判定、チェック結果の通知は、実施者が対応します。ITシステムを導入

した場合には、その運用と管理が必要になります。もちろん対応はIT部門担当者になります。

  1. ストレスチェック実施後

高ストレス者の診断を受けた際には、申請のあった従業員に対して、面接を実施します。対応は面接指導の医師、もしくは実施者になります。また、チェック結果の集団分析も担当します。

チェック結果の集計、入出力、保存などの取扱いは、事業者、産業医、実施事務従事者が担当します。

面接を受けた従業員に対する就業措置や、労働基準監督署への報告、そして集団分析結果を受けての職場改善は、人事担当者が対応します。

ストレスチェックの義務化制度の「目的」とは

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ストレスチェックの義務化の目的は、メンタルヘルス不調の第一予防です。不調である従業員の洗い出しや、早期発見は目的ではありません。まずは、不調になる前に、労働者自身でストレスの自覚を促すこと、そして、その結果をもとに、企業への職場環境の改善を促すことが目的です。

近年企業の経営戦略においてキーワードとして挙がっている「ワークスタイル変革」に結びつくのが職場環境の改善です。「ワークスタイル改革」とは、ワークスタイル、ライフスタイルが多様化している現代において、心身ともにより働きやすいと感じられる職場環境を作ることです。この結果は、企業の業績アップに繋がります。重要な経営戦略のひとつなのです。

労働者に対する不利益取扱いを防止する

面接指導の申出に対する不利益な取扱いは法律で禁止されています。法律で禁止されていなくても、下記は行ってはいけないとされています。

  1. ストレスチェックを受けないことを理由に不利益な取扱いをすること。
  2. ストレスチェックの結果を提供することに同意しない、これを理由とした不利益な取扱いをすること。
  3. 高ストレスと判断された労働者が、面接の申出をしないことを理由に不利益な取扱いをすること。
  4. 面接指導の結果を理由に以下の行為をすること。
  • 解雇
  • 雇用契約を更新しない
  • 退職を勧奨する
  • 配置転換や役職変更
  • 労働契約法などの労働関係法令の定めに反する措置をすること。
  1. 医師の意見と著しく異なる内容や程度の異なる就業上の措置をすること。

ストレスチェックの実施、主体はあくまで医師や保健師

ストレスチェックの実施においては、会社ではなく、医師、保健師、一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士が主体となって行います。ここで実施者として対象外となるのは、人事権を持っている人です。会社の代表(社長)はもちろんのこと、人事担当者は担当することができません。

反対に、ストレスチェック実施者は、ストレスチェック実施の調査票や結果データの入出力、個人の結果データの保存を担当するストレスチェックの実施事務担当にもなれません。実施事務のサポートを担う実施事務担当者にも条件があります。人事権のないものを選びます。

ストレスチェック結果の通知方法は個別で直接

ストレスチェックの結果通知には、万全の配慮を施さなければいけません。他人に中身が見られないようにする必要があります。封書やメール、また「労働者に個別に直接通知」をする必要があります。また、その際には次の様な内容も伝えます。

  • セルフケアに関するアドバイス
  • 面接指導の対象者(高ストレス者)であること。会社への面接指導の申出の方法
  • 相談可能な窓口に関する情報

個人のストレスチェックの結果は、ストレスチェックを受けた労働者の同意なしには会社へ提供されることはありません。ストレスチェックの結果の通知後、個別に同意の有無が確認されることになっています。ストレスチェックの実施前、または実施後に結果を会社へ提供することの同意を取得すること、あらかじめ同意した労働者だけを対象にストレスチェックを実施することもできません。

(編集:創業手帳編集部 / 監修:合同会社パラゴン|櫻澤博文