ストレスチェックにおいて、それぞれが果たすべき役割をはっきりとさせておく必要があります。「そもそもストレスチェックは何のために実施されるのか」を念頭におき、ストレスチェック制度における、実施体制とそれぞれの役割についてまとめてみました。
ストレスチェック制度での役割とは
- 責任者
ストレスチェック制度において、責任者は事業者のことを指します。ストレスチェックの実施、結果の保存を外部に委託したとしても、最終的に責任者と呼ばれるのは事業者になります。つまり、委託先の管理義務も事業者にあります。実際に事業所のメンタルヘルス対策に取り組む際の、方針の決定も事業者が行います。
- ストレスチェック制度担当者
衛生管理者、またはメンタルヘルス推進担当者を指名することが望ましいとされています。ストレスチェックの実施計画の策定、実施の管理が主な仕事です。個人情報の取扱いはありません。
- 実施者
外部委託も可能です。守秘義務があります。医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士などによりストレスチェックの実施が行われます。個人情報の取扱いがあるため、労働者の解雇に関して直接の権限を持つもの、つまり監督的地位にあるものは対象外となります。
ストレスチェックの実施内容としては、企画や結果の評価、高ストレス者の選定、面接指導の申出への勧奨、結果の保存などが含まれます。医師は、面接指導の実施も担当します。
- 実施事務従事者
3の実施者の補助的役割を担います。外部委託は可能です。守秘義務があります。個人情報を取り扱うので、労働者の解雇等に関して、直接の権限を持つもの、監督的地位にあるものは対象外になります。
実施者の補助は、事務的な補助が中心となります。調査票の回収やデータ入力などを行います。
ストレスチェックの実施体制の整備について
ストレスチェック制度は、事業者の責任のもと実施されます。実施にあたり、事業者は、実施計画の策定、上記で紹介したそれぞれの役割を担当する人を決め、実施体制の整備を行います。
ストレスチェック制度の実施における注意事項
- 安心の環境づくり
ストレスチェックの結果は、受検した労働者の同意なしには、事業者に提供できないこと、検査の実施に従事した者の守秘義務が規定されていることから、労働者のプライバシーへの配慮が十分に求められているということが分かります。
ストレスチェックは、基本自記式で行われます。労働者が自分の現状についてありのままに正直に答えられるような環境を整えることもとても大切です。安心できる環境で解答出来なければ、正しい情報を得ることは出来ません。現状や状況が正しく反映されるような、解答しやすい環境づくりを心がけましょう。
- 配慮すべきなのは検査を受けている受検者だけではない
ストレスチェックを受けた労働者が所属する部署の責任者にとって、ストレスチェックの結果は、とても重要なものになります。人事労務管理、健康管理能力を問われる責任者が、役割を果たしているかどうかの評価指標になるからです。責任者に不利益が生じるケースに配慮をする必要も出て来るのです。
- 面接指導などの申出がしやすい環境づくり
ストレスチェック実施後に、その改善に向けて、面接指導を受けよう!と思う対象者がいても、申出のしやすい環境が整っていなければ、意味がありません。面接指導を必要としている労働者が安心して医師の面接への希望を申出できるような配慮はかかせません。
ストレスチェック制度の目的は?
そもそも、ストレスチェック制度の目的は、労働者のメンタルヘルス不調の一次予防です。つまり、未然防止です。ストレスを感じている労働者は、なんと50%を超えると言われてきました。つまり2人に1人が仕事や職場で悩み、ストレス、不安を抱えている状況を打破するために、メンタルヘルスケアの実施の促進を目指したことがひとつのきっかけです。
また、仕事による強いストレスが原因となり、精神障害を発病、そして労災認定される労働者が年々増加していく中で、労働者のメンタルヘルスの不調をなんとか未然に防ぐことができないかと考えることが、重要な課題となってきました。
こういった背景から、ストレスチェック制度の義務化に至ったというわけです。そもそもこの制度の目的は、労働者が自身のストレスの程度をしっかりと把握すること、気づくことを促すというところにあります。そして職場環境の改善につなげていくことで、働きやすい職場となり、そこで働く労働者のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐことが目的なのです。
ストレスチェックの実施について
実施の頻度は、1年以内ごとに1回とされています。労使で合意した場合には、1年以内に複数回の実施、ストレスが高くなると懸念される繁忙期などに実施することも可能です。しかし、ストレスが高くなる可能性があるといって、忙しいことを理由に受検しない労働者が多い中で、繁忙期に実施することは、果たして可能なのでしょうか。
一般の定期検診と同時に実施する際には、受検者に向けて、一般の定期健康診断とストレスチェックの目的、そして取扱いの違いをしっかりと認識してもらう必要があります。実施の対象となる労働者は、常勤している労働者になります。休職している労働者は対象外になります。
ストレスチェック結果の保存について
まず労働者の同意が得られている場合には、事業者が結果の記録を作成後に「5年間の保存」をする必要があります。
労働者の同意が得られていない場合には、事業者が指名した担当者が「5年間保存」させるなどの必要な措置を講じる必要があります。
ストレスチェック実施後にすべき報告
ストレスチェック制度については罰則ないのですが、実施状況を労働基準監督署に報告する必要があります。報告内容は、「ストレスチェックの実施時期」「ストレスチェックの対象人数」「ストレスチェックの実際の受検人数」「面接指導の実施人数」です。
ストレスチェックの実施は社内?外部へ委託?
小規模な会社であれば、また人事担当部署の人手に余裕があれば、社内ですべてを行うことも良い方法です。しかし、受検者の数が増えて来ると、事務処理量は膨らみます。事務処理の量が増えるという単純なことだけでなく、データの管理は、取扱いに慣れている外部業者に委託することが効率もよく、結果的には安上がりということもあります。
事務処理量、実務に関わる人数、管理にかかる手間などを考慮して、社内ですべてまかなうのか、外注にするのかを判断しましょう。
外注の際に気をつけるべきことは、委託先が本当に信頼できる会社なのかということです。ストレスチェック制度の導入のタイミングを狙って新規参入している企業もたくさんあります。信頼できる業者の選び方は、厚生労働省のチェックリスト例を参考にしましょう。
ストレスチェック実施によって、ストレスの状況を把握するだけでなく、改善に努め、最終的には会社の生産性のアップにつなげる必要があります。メンタルヘルスチェックはタダではありません。コストをかけて行ったのにも関わらず、「チェックを実行しました」で終わっては意味がありません。外部のサポートツールなども上手に使いながら、職場環境の改善に繋がる体制の構築が求められています。
(編集:創業手帳編集部 / 監修:合同会社パラゴン|櫻澤博文)