ストレスチェック制度Q&A|就業上の措置が必要な労働者に退職勧奨した場合、事業者の責任はどうなる?

須藤 玲素子(26)
先生!事業者が就業上の措置が必要な労働者に退職勧奨した場合、事業者はどのような責任を負いますか?教えてください!


先生(52)
わかりました、玲素子さん。詳しく解説しましょう!

就業上の措置が必要な労働者に退職勧奨できる?でも解説したように、このケースで事業者が退職勧奨を行なうのは不当だと考えられるから、不当行為責任に基づく損害賠償施金(民法709)を負う可能性がある。また、このケースでの退職勧奨による退職合意についても無効または取り消しの可能性もあるんだよ。
 
1.退職勧奨は違法?
事業者が行なってはいけない不利益な取り扱いとは?でも解説したように、事業者は労働者に対して不利益な取り扱いをしてはいけないんだ。ここでいう「不利益な取り扱い」とは、労働者に不利益がある場合だけでなく、労働者の健康確保に必要な範囲を超えた不合理な取り扱いも含まれるんだよ。
指針では面接指導の結果を理由として退職勧奨を行うことについて「一般的に合理的なものとはいえない」と規定されているから、指針に反するものといえる。
もちろん、指針に反するからといって直接的に違法となるわけではないけど、違法であることの根拠にはなるよね。実際、面接指導を行った医師が労働時間の軽減を行うべきと意見したにもかかわらず退職勧奨を行うことは労働者に不利益を与え、労働者の健康確保に必要な範囲を超えていると考えられるんだ。
そのため、このケースの退職勧奨は民法709の不法行為に該当し、事業者は損害賠償を負う可能性が高いんだよ。

2.退職に合意した場合は退職が有効になる?
指針に反するからといってただちに退職合意が無効になるわけではないけど、退職勧奨がどのように行われたかによっては例外的に無効または取り消しになる可能性もあるんだ。
そして、労働者が退職後に退職合意の無効または取り消しを主張し法的手続きを経て数ヶ月後に認められた場合は、退職していなかったことになるため、事業者は就業していなかった期間数か月分について賃金を支払う必要があると考えられるよ。

指針に反する不利益な取り扱いは退職合意が無効になるだけでなく、損害賠償責任を負う可能性もあるから、事業者は医師の意見を反映した就業上の措置を行う必要があるんだ。