ストレスチェック制度Q&A|面接指導の申出をした高ストレス者が勤務成績が悪い場合、整理解雇対象にすると不利益な取り扱いとなる?

須藤 玲素子(26)
先生!面接指導の申出をした高ストレス者が勤務成績が悪いため理解雇対象としたいのですが、不利益な取り扱いとみなされますか?教えてください!


先生(52)
わかりました、玲素子さん。詳しく解説しましょう!

勤務成績が良好でないことを理由とした整理解雇は面接指導の申出を理由とする不利益な取り扱いには当たらない。ただ、ストレスチェックを理由とした解雇は不利益な取り扱いとみなされるから、労働契約法16の解雇権乱用により無効となる可能性があるよ。
 

1.高ストレス者に対する解雇は不利益な取り扱いとなる?
労働者が面接指導を受けていない時点でストレスチェック結果のみを理由とする不利益な取り扱いは禁止されている。でも、高ストレス者が心身に問題を抱えている可能性が高いから、勤務成績が良好でなく、整理解雇の対象になりうるよね。
その場合でも勤務時間、勤務成績に基づいた解雇であればストレスチェック結果のみを理由とした不利益な取り扱いとはみなされないと考えられる。
ただし、一般的に整理解雇は解雇権乱用法理の規則があるので十分に注意しよう。

2.不利益な取り扱いに当たる場合、解雇の法的効果はある?
労働安全衛生法第66条の10第3項後段では、事業者は、労働者が面接指導の申出をしたことを理由に、労働者に対して不利益な取り扱いをしてはいけないと規定している。不利益な取り扱いをした場合、労働安全衛生法に違反したことになるけれど、それで事業者が労働者に課した処分が直ちに無効になるわけではないんだ。
このケースは、平成15年12月4日労判862号14頁の判例が参考になる。学校法人の職員が産後休業を取得し、勤務時間短縮措置を受けたところ産休日と短縮時間を欠勤日数に加算されて賞与が支給されなかったため、賞与の支払いを求めた事案だ。
この事案では、産休期間や短縮時間を欠勤として取り扱ったことによって出勤率90%以上の者にのみ賞与を支給する給与規定(90%条項)が民法90の公序良俗によって無効であることが争われたんだ。
判例では、この90%条項は産休や勤務時間短縮の権利の行使を抑制し、労働基準法が権利を保証した趣旨を実質的に失わせると判示して、産休期間や勤務時間短縮部分を出勤日数として認めなかった部分は、公序に反して無効であると判断したんだ。
もちろんこの判例がストレスチェックに完全に当てはまることではないけれど、結果としてストレスチェック受検の拒否につながる解雇措置をすることが社会通念上の相当性を欠くとみなされて、解雇濫用法理(労働契約法16)によって解雇が無効になる可能性は否定できないんだよ。

このため、高ストレス者になんらかの処分を行う場合は、根拠となる客観的なデータや資料を集めておこう。ストレスチェック結果によって不利益な取り扱いがなされたと受け取られないように対象となる労働者に十分な説明をすることが重要なんだよ。