ストレスチェック制度Q&A|事業者がストレスチェック結果を知るのは違法?

須藤 玲素子(26)
先生!事業者はストレスチェック結果を知ることができますか?不適切な手段で入手した場合はどのような責任を負いますか?教えてください!


先生(52)
わかりました、玲素子さん。詳しく解説しましょう!

事業者は(1)労働者から同意を得た場合(2)労働者が面接指導の申出を受けた場合に限りストレスチェック結果を取得することができるんだ。もし実施者が労働者の同意を得ずに事業者にストレスチェック結果を提供した場合、両者に民法上の責任を負う可能性がある。また、事業者(の従業員)が実施者の承諾なくストレスチェック結果を入手した場合は、労働者、場合によっては実施者に対して不法行為責任が発生する可能性があるだけでなく、入手した従業員に刑事責任が及ぶ可能性もあるんだよ。
 

1.事業者がストレスチェック結果を知るケースとは?
法において事業者は労働者の同意を得ることなくストレスチェック結果を入手することは認めていないんだ。だから、事業者は上記の(1)(2)の場合のみストレスチェック結果を知ることになるんだよ。
ただ、(2)の場合は労働者の同意を得ているわけではないよね。事業者へ面接指導の申出をすることでストレスチェック結果の提供に同意するとみなされるからなんだ。

2.事業者が違法または不相当にストレスチェック結果を入手した場合
逆に、事業者が(1)(2)以外でストレスチェック結果を入手した場合は実施者、事業者とその従業員に法的責任が発生する可能性があるんだ。
・実施者に対する法的責任
ストレスチェック結果は労働者の個人情報に該当し、高度なプライバシー性があるんだ。このような情報を漏えいした場合はプライバシー権の侵害として民法上の不法行為責任を負う可能性があるんだよ。
さらに情報漏えいに関与した実施者には刑法上の秘密漏示罪、実施事務従事者には労働安全衛生法上の刑事責任を問われる可能性があるんだ。

・事業者に対する法的責任
事業者に対してもプライバシー権の侵害として民法上の不法行為責任を問われる可能性がある。また、実施者の同意の上でストレスチェック結果を入手した場合には両者に共同不法行為が成立する可能性がある。一方で、実施者が関与しないところで不当に入手した場合は実施者に対しても不法行為責任を問われる場合がある。これは情報漏えいに対して実施者が風評被害を受けるなど、事業に影響が出た場合に適用されるんだ。
また、ストレスチェック結果を入手した従業員に不法行為が問われる場合は事業者に対しても使用者責任が問われる可能性があるんだよ。

・入手した従業員に対する法的責任
実際に情報を入手した従業員個人についてもデータの媒体を持ち出した場合は刑法上の窃盗罪に問われる可能性がある。
また、実施者のデータベースに不正にアクセスした場合は「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」に反することになるんだよ。

このように事業者はストレスチェック結果を入手することによるリスクが生じる。例えば労働者が面接指導の申出をした場合でも事業者はあくまでも面接指導を実施した医師からの意見により就業上の措置をとればいいからストレスチェック結果を知る必要性は低いよね。だから、事業者は極力ストレスチェック結果を取得しないことが望ましいんだ。