ストレスチェック制度Q&A|委託先から個人情報が漏えいした場合、委託先はどのような責任を負う?

須藤 玲素子(26)
先生!委託先から個人情報が漏えいした場合、委託先はどのような責任を負いますか?また、リスクを減らすためにはどうしたらいいですか?教えてください!


先生(52)
わかりました、玲素子さん。詳しく解説しましょう!

ストレスチェックの実施者と実施事務従事者は、守秘義務を負っているから、業務上知りえた個人情報を漏えいした場合は、労働者個人に対して、民事上の責任(不法行為責任)を負うんだ。外部委託の場合は、委託元に対し、債務不利益責任を負うことがあるんだ。また、実施者や実施事務従事者が医師、看護師等である場合は個人が刑事責任に問われることがあるんだよ。
実施者や実施事務従事者は労働者のストレスチェックの結果等について守秘義務を負い、漏えいした場合は罰則等が定められていることを研修等で周知させる必要があるんだよ。
 

1.個人情報が漏えいした場合、誰がどんな責任を負う?
・個人情報の保護について法で定められていることとは?
医師は業務上取り扱ったことについて刑法134により守秘儀医務を負い、その他保健師や看護師、精神保健福祉士もそれぞれ保健師助産師看護師法42の2、精神保健福祉法40により守秘義務を負っているんだ。
また、労働安全衛生法上も、ストレスチェック検査や面接指導に関して知りえた労働者の秘密を漏らしてはならないと定められている。また、ストレスチェック検査を行った医師等は、当該労働者の同意を得ずに検査結果を事業者に提供してはならないと定められているんだ。
・実施者、実施事務従事者、漏えいした者の使用者、事業者は責任を問われる?
だから、実施者や実施事務従事者が、これらの守秘義務に反して個人情報を漏らした場合は、対象の労働者から民法709、710より不法行為責任を問われることがある。また、委託先の実施者や実施事務従事者が漏えいした場合、その使用者が民法715により使用者責任を問われることがあるんだ。
さらに委託元である事業者が使用者責任を問われるかは、委託先との間で指揮命令関係あるかによるけど、委託先が一定水準を満たしていれば使用者責任を問われる可能性は低いと言えるんだ。
また、委託先は委託元の事業者に対し、適正かつ適切なストレスチェックを実施するべき契約上の義務を負っているよね。だから、民法415により事業者から債務不履行責任に問われる可能性もあるんだよ。
・漏えいした個人に罰則はある?
守秘義務の違反については、漏えいした個人に刑事責任が問われることもある。医師については刑法134条、保健師、看護師等については特別法上、実施事務従事者については労働安全衛生法上にそれぞれ罰則が定められてるんだ。

とはいえ、情報漏えいの多くは実施者から事業者に対し、労働者から必要な同意を得ないまま情報を提供したり、受験者の安全、健康、生命に差し迫った危険や危機があると判断される場合ではないのに、生データ等は提供可能な範囲を超える情報を提供した場合が想定される。
実施者、事業者が個人情報の保護や記録の管理に十分に注意を払ってストレスチェック制度の実効性を高めること大切なんだよ。

2.リスクを軽減するためにどんな対策をしたらいい?
外部機関に委託する場合、その期間がストレスチェックや面接指導を適切に実施できるか事前にチェックすることが望ましい。
その一環として、実施者や実施事務従事者になるものに対して研修を実施し、自らに守秘義務が課せられること、労働者本人の同意なくしてストレスチェックの結果を事業者に提供することが禁止されていることを周知・理解を徹底することが大切なんだ。
また、個人情報の取り扱いについて質問、苦情、情報開示などを受け付ける相談窓口を委託元、委託先にそれぞれ設けて周知しておくのも大切なことなんだよ。

ストレスチェックについて個人情報が漏えいした場合、再発を防止するために対策等を衛星委員会で調査審議する必要があるんだよ。