ストレスチェック制度Q&A|ストレスチェックを受けない労働者に健康状態がわからないことを理由に配置転換するのは不当?

須藤 玲素子(26)
先生!ストレスチェックを受けない労働者またはストレスチェック結果を事業者に提供することを同意しない労働者に対して、健康状態がわからないことを理由に配置転換するのは「不利益な取り扱い」となりますか?教えてください!


先生(52)
わかりました、玲素子さん。詳しく解説しましょう!

ストレスチェックを受けない、または、ストレスチェック結果の提供に同意しない労働者に対してこれを理由に配置転換することは実質的にストレスチェックの受検や結果の提供を強要することになるよね。配置転換が労働者の不利益となるなら指針で禁止されている「不利益な取り扱い」となるんだよ。
 

1.不当な取り扱いは禁止されている?
指針では、事業者は労働者がメンタルチェックを受検しない場合に不利益な取り扱いをすることや労働者がストレスチェック結果の提供を同意しない場合に、そうしたことを理由とした不利益な取り扱いをすることは禁止されているんだ。ストレスチェック制度はあくまでメンタル不調の一次予防が目的だから、事業者が労働者に強制することを防ぐ目的があるんだよ。

2.労働者の健康状態がわからないことを理由に配置転換するのは不当?
ストレスチェックを受検しないまたはストレスチェック結果の提供に同意しない労働者を配置転換することは、労働者の不利益とならないかぎり、問題ない措置なんだ。一方で労働者の不利益になる場合は、メンタルヘルスの状態がわからないからという理由で配置転換をすると不利益な扱いとみなされるんだよ。もっともそれ以外に正当な理由があれば認められると考えられる。
事業者は安全配慮義務の一環として健康状態に問題があると考えられる労働者に対しては、産業医の診断を受けるよう命令することができるんだ。これは就業規則に規定されていなくても実施できるため、「労働者の健康状態がわからないため」を理由として配置転換を行なうと合理性がないと判断される可能性が高いよ。

3.配転命令に関する裁判例は?
平成19年1月24日の名古屋地裁の判例では、配置転換の命令権の行使について、事業者の安全配慮義務に言及し、「事業者が労働者の精神状態から異動を命じることで労働者の心身の健康を損なうことが予見できる場合、労働者に異動に対する不安や疑問を解消でいるように説明し、その上で労働者が異動を拒絶する場合は異動命令を撤回することも考慮すべき義務がある」と判示してるんだ。

ストレスチェックを受けないこと、ストレスチェック結果の提供に同意しないことを理由とするだけでなく、「健康状態がわからない」ということを理由に配置転換をすると実質的に「不利益な取り扱い」とみなされるから注意しよう。